<八橋かきつばた園>
「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」
平安時代の歌人在原業平が「かきつばた」の5文字を句頭に入れて歌を詠んだ八橋は、伊勢物語の昔から広く知られるカキツバタの名勝地です。敷地13,000uの庭園内には3万本が生息し、5,000uの池一面に咲きそろう5月初旬が見頃です。
<謡曲「杜若」と業平の和歌>
謡曲「杜若」(かきつばた)は、在原業平が都から東げ下る途中、三河国八橋で美しく咲く杜若を見て都に残した妻を偲び「かきつばた」の五文字を句の頭に置いて
「唐衣 きつつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思う」
と詠んだと書かれている伊勢物語を典拠にして作曲されたものである。
東国行脚の旅僧の前に、業平によって詠まれた杜若の精が女の姿で現れ、伊勢物語の故事を語り、業平の冠と高子の后の唐衣を身につけて舞い、業平を歌舞の菩薩の化身として賛美しばがら杜若の精もその詠歌によって成仏し得たことをよろこぶという雅趣豊かな名曲である。
松尾芭蕉 |
杜若(かきつばた) 我に発句の おもひあり |
芭蕉が貞亨元年(1684)に『野ざらし紀行』を終え翌年4月上旬木曽路を経て帰庵の途、鳴海(愛知県)の俳人下郷(しもさと)知足の家に泊り俳筵(はいえん)を開いた時の作といわれる。芭蕉は知足の案内でこの旧蹟八橋に遊んで懐古にふけったのであろうか。 |