木々の緑に囲まれ、静寂な永明寺の前庭にハッと息を呑むような美しさが目に入る。若い蕾が橋の欄干につける擬宝珠に似ていることから(あるいは、若い花穂の形が、仏像の後ろにある炎の形をした飾り「宝珠」に似ているという説もある)、ギボウシと名が付いた花だが、ひときわ存在感がある。ギボウシは日本古来からの園芸品ですが、特に江戸時代より鑑賞用に植えられてきた。江戸中期の書物に、「秋法師」の名でギボウシの栽培記録が初めて登場している。
シーボルトがヨーロッパへ持ち帰って以来、多くの品種が欧米に渡り、品種の交配により今では非常に多くの種類がある。花色は白から紫で、1日花です。半日陰の庭植えに人気が高い。
文政6年(1823)、長崎の出島へやってきたドイツ人医師シーボルトは、日本の植物を多数収集し、ヨーロッパへ持ち帰った。その中に含まれていた擬宝珠は、当時のヨーロッパの人々に喜んで迎えられ、急速に広まった。そして今日では、日本以上に庭園に好んで用いられる植物となった。
彼はシーボルト事件のため国外追放処分となったが、鎖国が解かれた後再来日し、さらに多くの植物を持ち帰っている。帰国後、彼はそれらの植物をヨーロッパの庭園に普及させることに力を注ぎ、カタログを作成し注文をとり販売する通信販売のような事業も行った。 |