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紅もゆる丘の花 早緑(さみどり)匂う岸の色 都の花にうそぶけば 月こそかかれ吉田山 |
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みどりの夏の芝露に 残れる星を仰ぐ時 希望は高く溢れつつ 我らが胸に湧き返る |
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千載秋の水清く 銀漢空にさゆる時 通える夢は崑崙(こんろん)の 高嶺の此方ゴビの原 |
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ラインの城やアルペンの 谷間の氷雨なだれ雪 夕べはたどる北溟(ほくめい)の 日の影くらき冬の波 |
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ああ胡里よ野の花よ ここにも萌ゆる六百の 光も胸も春の戸に うそぶき見ずや古都の月 |
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それ京洛(けいらく)の岸に散る 三年(みとせ)の秋の初紅葉 それ京洛の山に咲く 三年の春の花あらし |
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左手(ゆんで)の書(ふみ)にうなづきつ 夕べの風に吟ずれば 砕けて飛べる白雲の 空には高し如意ヶ獄(にょいがたけ) |
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神楽ヶ岡(かくらがおか)の初時雨 老樹のこずえ伝うとき けい灯かかげ口ずさむ 先哲至理の教えにも |
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あゝまた遠き二千年 血潮の史(ふみ)や西の子の 栄枯のあとを思うにも 胸こそ躍れ若き身に |
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希望は照れり東海の み富士の裾(すそ)の山桜 歴史を誇る二千載 神武の児等が立てる今 |
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見よ洛陽の花がすみ 桜の下の男(を)の子らが いま逍遥(せうえう)に月白く 静かに照れり吉田山 |