1 |
人みな花に酔うときも
残雪恋し山に入り
涙を流す山男
雪解(ゆきげ)の水に春を知る |
2 |
ミヤマキリシマ咲き誇り
山くれないに大船(たいせん)の
峰を仰ぎて山男
花の情を知る者ぞ |
3 |
四面山なる坊がつる
夏はキャンプの火を囲み
夜空を仰ぐ山男
無我を悟るはこの時ぞ |
4 |
出湯(いでゆ)の窓に夜霧来て
せせらぎに寝る山宿に
一夜を憩う山男
星を仰ぎて明日を待つ |
5 |
石楠花(しゃくなげ)谷の三俣(みまた)山
花を散らしつ篠分けて
湯沢に下る山男
メランコリーを知るや君 |
6 |
深山(みやま)紅葉に初時雨
暮雨滝(くらさめたき)の水音を
佇(たたず)み聞くは山男
もののあわれを知る頃ぞ |
7 |
町の乙女等思いつつ
尾根の処女雪蹴立てつつ
久住(くじゅう)に立つや山男
浩然の気は言いがたし |
8 |
白銀(しろがね)の峰思いつつ
今宵湯宿に身を寄せつ
斗志に燃ゆる山男
夢に九重(くじゅう)の雪を蹴る |
9 |
三俣の尾根に霧飛びて
平治(ひじ)に厚き雲は来ぬ
峰を仰ぎて山男
今草原の草に伏す |