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今からおよそ千年前、京の都に安倍晴明という天文暦学にくわしい陰陽師があった。ある時荒波で聞こえた遠州灘に面したこの地に立ち寄り、村人の乞いに応じてそれまでしばしばおそった津波防止のために、ここにあずき色の小石を積み上げて熱心に祈祷をした。
その霊験により以後この村には津波の災難がなくなったと言われる。この為村人は自然の暴威を鎮めた晴明の徳を讃えてここに祀り晴明塚と称するようになった。又晴明塚に祈願すると疱瘡にかからぬと信ぜられ往年その流行期には遠近から多数参詣者があった。
疫病予防の為には赤い石一個を借り出しお礼の時には二個にして返す。返した石はどんな色の石でもあづき色に変わると伝えられ遠州七不思議の一つに数えられている。晴明塚の前に安倍晴明のマークである「五芒星」が描かれているのが印象深い。(掛川市指定文化財)
(遠州七不思議:静岡県西部(旧遠江国)を遠州と呼ぶ。その地域に伝わる不思議な物語のこと) |
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なお、「天災から日本史を読みなおす」(磯田道史 著 中公新書)によると『晴明塚の南側の砂丘が海抜14.5mで一帯の最高地点であった。掛川市で想定される最大津波は14m。このクラスの津波がくると、晴明塚南側だけがポッカリと島のように浮くはずだ。陰陽師の塚は、過去に津波で浸からなかった、点のような場所を示す赤い印であったのではないか。そんな空想が私の脳裏をよぎった。』(同書p107〜p108) |
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