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行程の大部分を徒歩に頼っていた江戸時代の旅人にとって、現代にも増して重要なことは、旅の所持品を可能な限り軽く、少なくすることだった。封建社会であった当時は、階級や性別により旅支度も異なった。庶民の旅が盛んになったのは17世紀後半以降のことで、仕事や信仰のほかに、物見遊山が増えていった。
<旅姿>
江戸時代の旅姿は身分や性別により異なる。
武士 |
菅笠、紋付羽織、野袴、手甲、脚絆、足袋、草履履きで、刀には柄袋をかけていた。 |
町人 |
笠、着物、手甲、股引、脚絆、足袋、わらじ履き、荷物は平行李や風呂敷に入れ、振分荷物にして肩にかけて歩いた。中には護身用の小刀を差す人もいた |
女性 |
笠、着物で、着物の上に、上張りを着、手甲、脚絆、白足袋、草履履きであった。 |
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<旅道具>
江戸時代の一般的な男性の携帯荷物は、「旅行用心集」(1810)によると。「道中所持すべき品の事」として、矢立て、扇子、糸針、懐中鏡、日記、手帳、櫛(くし)、びん、つけ油、提灯、蝋燭(ろうそく)、火打道具、懐中付木、麻綱、印板、鉤(かぎ)などがあげられている。
この他にも、煙草道具、財布、道中案内記、耳かき、薬、下帯、扇、講の鑑札なども持ち物に含まれていた。
また、身分証明書として往来手帳が必要で、関所を通過する場合、女性はさらに女手形が必要であった。往来手帳を持たないで参詣の旅に出かけることを、抜け参りという。 |
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携帯用枕 |
胴乱(小型のカバン) |
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煙管(きせる) |
煙草入れ |
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紙算盤 |
持仏 |
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携帯用硯箱 |
銅貨 |
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小田原提灯 |
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携帯用ろうそく立て |
火打ち道具入れ・ろうそく入れ・手鏡 |
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箸(伸縮性) |
弁当行李(こうり) |
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弁当箱(鉄製・三段重ね) |
日時計 |
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小物入れ |
紙切れ・目打ち |
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針・糸・はさみ・物指 |
煙草道具 |
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携帯用の煙草道具で、火打箱に火打金、火打石、火口(ほくち)、付木(つけぎ)が入っている。火打金の縁を火打石で打ち擦って火花を出し、火口で受けて火を付木に移した。 |
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<交通手段>
江戸時代、五街道における交通手段は原則的には徒歩だったが、人や荷物の運搬には馬も利用された。それ以外には乗物、駕籠、輦台(れんだい)、舟などもあった。
乗物には引戸があり、乗ることのできるのは公家、大名とその妻子や医者などに限られていた。最も一般に多く利用されたのは引戸がなく、二人の駕籠かきが担ぐ簡単な宿駕籠で、俗に雲助駕籠と呼ばれた。この宿駕籠は宿場の問屋場で借りることができた。
また、川を渡る手段には渡舟か、旅人自らが渡ったり、川越人足に頼る徒渡り(かちわたり)がある。川越人足に頼る徒渡りには、人足が先導する「手引き渡し」、人足が肩に担いで渡る「肩車渡」、梯子状の台に乗り、人足に担いでもらう「輦台渡し」などがあった。(東海道岡部宿
大旅籠柏屋にて) |