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広島バスセンターは広島県広島市の中心部、紙屋町交差点に位置し、広島市他が出資の第三セクター「株式会社広島バスセンター」が運営している。広島のバスネットワークの拠点として西日本でも有数な規模を誇る一般バスターミナルである。そごう広島店・アクア広島センター街の3階に内包(取込み)されたその施設がある。
JR広島駅から西側へ2km程で県庁、オフィス街、平和公園、広島城が近く便利な場所にある。近郊路線バス、空港リムジン線バス、高速バスが発着し、また路面電車とバスの停留所、新交通システムの駅とも近接しており、広島市の交通結接点の機能を果たしている。1日平均利用者3.3万人、発着数3100本(2017年時)
(施設名称には「バスセンター」を使用しているが、本編では一般的な「バスターミナル」で記述する。)
<沿革>
■初代
戦後の復興期に広島市中心部の紙屋町周辺では、バス会社ごとにバス停留所を順次設置していったがその場所はバラバラで利用者には不便であった。
このように散逸しているバス停を一か所に整理・統合して利便性を向上させる目的で昭和30年(1955)3月にバスターミナル会社が設立され、紙屋町交差点角地に建設を開始し、7月末に「広島バスセンター」と名付けて開業した。敷地面積5438u、平面式の施設で建物は軽量鉄骨一部2階建て1900uで、乗降ホーム、待合所、食堂、切符売り場などが設けられた。ホームは頭端斜め停車式で発車時にはバックが必要であった。
昭和32年(1957)7月、西側に広島市民球場が開場してから利用者が急増したが、バスの到着場所が少ないために構内に入るバスの渋滞が激しくなり、ホームも混雑を極めるようになった。
この解決のために、昭和39年(1964)に北側隣地2268uを取得し、専用の到着ホームに降り場7か所、バス待機場所を設置し、また出発ホームの乗り場も10か所に改善された。
■建替
その当時から、敷地の有効活用と土地代の負担軽減のためにバスターミナルと商業施設との一体化建築が模索され始めた。百貨店の招致を行い、株式会社そごうと昭和44年(1969)10月に契約を締結した。その具体化過程で、1,2階を店舗にしたいそごう側の要望とテナント入居希望者の増加等による諸条件を取り入れて度重なる設計変更を経た。最終的に、3階の大部分をバス専用施設として、広島そごう・広島センター街と合築した地下3階・地上10階の「広島センタービル」の建築が決定した。
建築に先立って、西側の広島西警察署(現在の広島警察署)が北東位置(現在の県庁北側)に移転が決定した。また、昭和48年(1973)3月に徒歩300mと離れたが、仮設ターミナルを北東位置(現在の県庁東館)に設置した。同時にセンタービルの工事に着工し、広島西警察署の解体、移設工事に平行して建設作業が進められて昭和49年(1974)10月に新しい「広島バスセンター」が完成、供用を開始した。
商業施設とバスターミナルが立体的に合体した形態は年代的に名鉄バスセンターに次ぐもので、集客に寄与して広島センタービル内外は賑わった。
平成3年(1991)にそごう西隣へホテルメルパルク(旧広島郵便貯金会館)、7階建てが開業しバスターミナルと直結したが、ビル群に取り囲まれる形になった。
■その後の変遷
平成6年(1994)8月に広島市北部に至る新交通システム・アストラムラインが開業し、自家用車の普及もあって、このころから、バス利用者の減少局面に入っていった。また、公共交通再編成による郊外路線のフィーダー化、平成21年(2009)10月に広島市民球場が広島駅東に開場したマツダスタジアムに役目をゆずって閉鎖らの影響でバス利用者は往時から減少し、発着本数は縮小している。結果として構内は以前よりゆとりのあるものとなってきている。
完成以来45年を経て古びてきているが改装を重ねて今でも広島市のバス交通の拠点として機能し、広島電鉄、広島バス、広島交通、芸陽バス、中国JRバスらの地元バス会社他、各社多数のバスが乗り入れている。
■リニューアル
平成23年(2011)12月にコンコースのリニューアルが完成した。接客・旅客施設は明るく使いやすく改修され、通路はダークブラウンの色調に、出発ホームとの間にガラスドアが設置され、全般に空港施設のような佇まいに装いを一新した。
平成30年(2018)に入って飲食ゾーンの大規模改修がなされ、3月に「バスマチフードホール」が開業した。
令和元年(2019)10月に出発ホームの発車合図灯の運用が停止され、11月に乗り場別のバスロケーションシステムの運用が開始された。12月には出発ホーム中央のトイレがユニバーサルデザインに改装された。 |
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<バスターミナルの構造>
■外観
紙屋町交差点に接する広島センタービルの1階角地にあたる正面の右側にバスターミナルの出入口がある。その奥にあるエスカレータで3階に上がるとバスターミナル構内に至る。外観からはその様子は窺えない。出入口は、他4か所にある。 |
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■施設全体
構内は10階建てビルの3階に内包されている施設とこれに結合されている屋外開放の施設から構成している。 |
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●運営管理施設=完全にビルに内包されたコンコースにある。
・接客施設:きっぷ売り場、案内所
・旅客施設:待合所、ドラッグストア、トイレ、コインロッカー
・通路:発車時刻表示板、コンビニ、フードコート |
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●走行・乗降施設
@施設の東側半分=ビルに内包されている
・出発ホームでは、7番乗り場付近から東側ビル突端までの車路、ホーム
の連絡通路。
・上部を覆われているので排気ガスの影響を受けやすく薄暗い。
A施設の西側半分=ビルから突出した形状で屋外開放、@に一体化。
・出発ホームでは、6番乗り場付近から西側の1番乗り場への車路、ホー
ム
・周囲をビルに囲まれた谷間にある。下部はセンタービル駐車場、店舗へ
の資材搬入路等に活用されている。
●車路
西側から東側に長い半楕円形に配置されている。北側が構内進入用で、東側
ビル突端部においてUターンし、南側の出場用に戻ってくる。バス待機場所
が車路の北側と南側に全15か所設置されている。入出場のバスが多く時間
帯によっては高頻度の走行、Uターン、停車、発車の風景が見られる。 |
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●出発ホーム
車路の南側に位置し、全11か所の乗り場がある。ホームは頭端斜め停車式
で、その角度を浅くして発車時のバックを無くし発車時間の短縮をしてい
る。ホーム上に待合室4か所と各社の運行管理室がある。
・都市間高速バスのりば
・空港リムジンバスのりば
・近郊路線バスのりば |
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(換気塔・車路の左が降り場) |
(1番降り場から9番方向) |
●到着ホーム
車路の北側に位置し、全9か所の降り場がある。一部の降り場は平行停車式
であるがその他は出発ホームと同じ形態である。市内バスの一部と観光バス
も発着する。喫煙所、コインロッカーとセンター街へ直通するエレベーター
がある。 |
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<構内とのアクセス>
構内へ入場するバスは北方にある城南通りの県立総合体育館交差点から、全長400mものアクセス道(一般道・専用道・スロープ・高架橋)を南下して施設に至り、出入口から構内に進入する。
構内から出場するバスは出入口からアクセス道を北上し県立総合体育館交差点に至り、目的地方面に向けて走行する。
バスは長いアクセス道により、これに接続する道路から構内へ至る長い時間を所要しているが、構内が混雑していてもバスはアクセス道に滞留ができ、接続する道路にその影響を及ぼすことが少なくなる効果がある。
紙屋町交差点から構内へは、鯉城通りを北上し広島城南交差点を左折し、城南通りを西進し県立総合体育館交差点を左折し、アクセス道に至る。コの字状に全長1kmを大回りする必要がありアクセスがよくない。それ故、市内線の大部分と近郊線の一部のバスは交差点近傍のバス停に停車し、構内へは入場しない。
<個人的な思い>
建築後約半世紀を経て、将来的には地区の再開発構想の中でセンタービルの改築構想もある。ただ、人口減少、高齢化、郊外商業施設の伸張による都心店舗の衰退、仮設バスターミナルと仮移設店舗の確保らで実現へのハードルは高い。
最近の一連のバスターミナルのリニューアルも、その波及効果を解析して将来のあり方を模索していく一環であろうか。
歴史あるバスターミナルであり、今少しの存続を望むが、建替時には環境に配慮した使いやすいターミナルの実現に期待したい。(2021年1月現在)
(画像と解説文は I・H さんの提供) |
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