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<「明鐘岬> 映画「ふしぎな岬の物語」の舞台となった「岬」カフェのある岬
房総半島の内房側、浜金谷から南へ2qほど下ると鋸山の尾根が東京湾に落ちる突端に明鐘岬(みょうがねみさき)がある。海釣り、シュノーケリング、磯遊び、夕陽を楽しむことができる隠れた名所である。その岬を突き抜けるトンネルの入口手前の脇道を右側に入りこんだ未舗装の駐車スペースの奥に「音楽と珈琲の店」を謳い文句のマリンブルーの塗装が鮮やかな小さな店「岬」カフェがぽつんと佇んでいる。
その「岬」を昭和53年(1978)から経営してきたのが女性オーナー店主である。熊本県出身の両親が、以前から当地に飲食店「阿蘇」を開店しその後、店主のおいがライブハウス「ASO」に切り替え、さらに店主が隣接地に喫茶「岬」を出した。店は住居の付け足し等、何回もの改修を経て、手づくり感満載の山小屋風の雰囲気の店になった。
知る人ぞ知る喫茶店になってライダー達に人気の名所であって、かくれた有名人も大勢、世界的なダイバーも訪問していた。
しかし、突然に平成23年(2011)1月20日夜、失火で全焼してしまった。店主には大きな衝撃だったが、再建の意欲は強く、常連客や協力者の応援もあって8月からプレハブ式ユニットハウスでの再建作業が続けられ、その年の12月22日に営業を再開した。
店は工事現場にあるようなハウスなので初代の手づくり感はないが内部に木材を多く使用し窓が広くなって眺めのいい店になった。常連客が看板を寄贈してくれウッドデッキを製作してくれた。来客数の増加に対処すべく平成26年(2014)10月には、隣に木造の小屋を増設した。
店内は映画のポスターやら、いろんなものが雑多に置かれていて、何か懐かしい感じがする。 |
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「岬」ファンの一人が小説家の森沢明夫さんであった。「いつかこの岬と店を小説にしたい」と。平成23年(2011)6月、小説「虹の岬の喫茶店」を発表した。
近年はこの本が出たこともあって、一般観光客ら大勢の人が来るようになっていた。
女優の吉永小百合さんがこの本を見て感動し、映画「ふしぎな岬の物語」を企画し、喫茶店主を主演した。映画は平成26年(2014)2月に撮影に入り、この際、ユニットハウスの店は入口方面に移動し仮設店舗で暫定営業、元の場所に撮影用の家がオープンセットで作られた。これは初代の家と形態は異なった。撮影終了後、セットは撤去され、その年4月から、店は現在の場所に戻り、10月に映画「ふしぎな岬の物語」が封切られた。
その反響は大きく、映画祭で受賞したこともあって、以後、訪問客が多くなってきて休日には大変な混雑となっていたが徐々に落ち着きを取り戻している。
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明鐘岬は風雨の強い日が多いところであるが、訪問した日は正月を過ぎた穏やかな平日の夕方で結構、年配客も多く人気の高さを感じた。テラス席はふさがっていたので店内の海の見えるカウンター席で、ジャズのBGMのもと、鋸山の湧き水で淹れたてのブレンドコーヒーを味わい、ゆったりとした時間を楽しむ。
眼下に広がる東京湾の浦賀水道を行き交う船を見ているとついつい時間の経つのを忘れる。対岸には三浦半島、左方向に三崎、城ヶ島の周辺を、右方向に横須賀の火力発電所の煙突を遠望する。晴れていれば正面に富士山が見えるがこの日はかすんで見えなかった。しばらくたって、半島の突端左、相模湾方面の海面が輝きはじめた。雲が厚くきれいな夕焼けとはならなかったが、しばし景色の変化を楽しむ。(画像と解説文は
I.Hさん提供) |